オールドラブソング

ウェスタンハットを斜めにかぶり

粋にカクテルをオーダーする

店の片隅のジュークボックスからは

いつか流行ったあのオールドラブソング

懐かしさに顔がほころぶ

扉の開く音がして

振り向けばあの娘(こ)が

はきざらしたブルージーンズに

真っ赤なハイヒールを履き

右手に恋のピストルを構えて

笑って僕に銃口を向けている

あの娘に狙われたんじゃ勝ち目はない

もの見事にホールドアップさ

少しふくらんだ胸を

真っ白なブラウスでおおい

モンローウォークで近づいてくる

一撃必殺のピストルを

気弱な僕の鼻先に突きつけ

昔のように踊りましょうという

少し雑音の入ったオールドラブソング

笑いながら僕らは踊る

窓からは真っ赤な荒野が

昔と変わらず懐かしく見える

あの娘の匂いも昔のままだ

夢見心地にカクテルを交わす

開拓時代の男女のように

小麦色に焼けた肌と

健康的な汗の匂い

  いつだって

  男は女のために狩りをしてくるのよ

  そうして

  女はいつも男を待っているものなのよ

こまっしゃくれたあの娘は

艶然と笑って言いやがる

まるでオールドラブソングみたいに

キザなセリフだぜ

なんだか気恥ずかしくて

ウェスタンハットを目深にかぶった