廃都

死者の上に墓が築かれ

いつしか雨風が

うち崩れた石組みだけを残す

人はもはやそこに死者の眠ることを知らない

民族が死に絶えれど

廃都は残り

その上を

塵灰がおおい

土砂がかぶさり

死に絶えた文明の上に

なにひとつ知らぬ民族が

またアスファルトをしいていく

我らの足もとから

滅びた文明の香気が漂ってくる

そのなかで

街ゆく人々は

陽炎のように揺らいでいるではないか

そして僕は見る

揺らぐ香気のなかで

死に絶えたはずの廃都が

蜃気楼のように浮かび上がり

呪いのように

摩天楼のうえに重なるのを